「執着」という感情に胸が高鳴るのはどうして?
強引なぐらいに”あなただけ”と熱く求められて、逃れることもできないように囚われて。力ずくにひとりだけを求める姿はもしかしたら滑稽でさえあるかもしれません。
でも、滑稽であればあるほどに、強引であればあるほどに、愛おしさを感じてしまう。
重いはずの感情がむしろ心地よい。
「執着」という感情の正体は、奪う側ではなく奪われる側の中にある「求められたい」という秘めた想いなのかもしれません。
自分では気づかないまま隠してしまった本音。奪われたい、壊されたいと思う隠された本性。
本来見えるものではない、晒すものではないものに触れたとき、人は強く惹かれ、執着が生まれるのかもしれません。
ただひとりを求める「執着」が生まれるのかもしれません。
今回はそんな「無自覚に“愛されたい”と秘めたる願いが見出され、囚われ、やがて満たされていく——そんな執着が好きな方へ」執着・独占欲の強いBL作品を紹介します。
先に作品を見たい方はこちらから試し読みできます。
『乳牛男子の乳しぼり』
『辺境伯騎士の執着婚』
「執着」が惹きつけられる理由|“奪われる側の願い”
滑稽であり愛おしい感情”執着”を生み出してしまうもの。それは”奪われる立場にあるもの”。
共通しているのは、自分の感情を隠してしまうことが上手すぎてしまうこと。
例えば人の癒しとなることに喜びを感じ、自分も満たされてしまう。そこに密かな快感を覚えてしまう。
だからこそいっそ無防備で、満たされてはいないという影の部分を無意識に隠してしまう。
無意識だからこそ無防備で、危うい。
その見え隠れする危うさを感じ取ってしまえばもうひとたまりもない。心臓ごと掴まれて惹きつけられて、ひとりしか視界に映らない。
もうたったひとりしか想えない。
そうして行き着いた果てのひとつの形、それが「執着」。
”奪われる側”の隠された密やかな欲望に惹きつけられた、愚かで滑稽な、愛おしい魂の形ではないでしょうか。
無自覚に「愛されたい」を抱えた人ほど「執着」を引き寄せる
知ってしまった。出会ってしまった。引き寄せられてしまった。
抱え持った陰りの痛々しさに目が離れない。手を差し伸べて、触れて、奥底に隠したものを暴いてしまいたい。
それは魔法のような、もしかすると罠にかかったようなもの。
「暴いて」
そんな甘い魅惑の囁きが聞こえてしまったものだけが知る、甘い罠。
逃がさないように捕まえて離さない、何度も何度も想いを言葉にして囁くのも、出会って囚われてしまったから。
興味深いのは、無理やりに振り向かせて閉ざしたものを壊して奪われたように見えて、実は主導権を握っているのは”奪われたもの”にあるところ。
その逆転が不可思議で危うくも強烈な魅惑を感じてしまいます。
執着・独占欲が強いBL同人おすすめ2選
ここからは、実際に「執着が生まれる瞬間」を描いた作品を紹介します。
【無自覚型】執着│隠された「愛されたい」を暴く│『乳牛男子の乳しぼり』

与えることで満たされていたはずの心が、求められることで崩れ淫らに変わる。
癒しを求め店に訪れる紳士たちに自らの生乳を与え、満たされる、乳牛エザキ。
自分の仕事に誇りを持ち誠実に乳を搾るエザキの心の奥にある「求められたい」「愛されたい」という感情を、清水は敏感に感じ取る。
誠実で無防備な抗えないからだと、心。
それを見抜いたからこそ清水は迷うことなくエザキを手に入れる。
与えることで満たされていたエザキが執拗に求められて乱されて…。そんなふたりのお話です。
【抑圧型】執着│抑えこんだ感情が暴かれる│『辺境伯騎士の執着婚』

抑え続けた感情が、逃げ場を失い溢れ出す。
置かれた立場の中で自分の気持ちを抑えることが自身の身を守り、しいては自分を慈しんでくれたものを守るのだと思って過ごしてきたジーク。
誰も傷つけないように。本心を隠し続け「愛される」ことの意味を知らずにいた。
そんなジークを10年の間ヴィルは見守り続け、ついに手に入れる好機が訪れる。
密やかで高貴。清廉で臆病な魂。ヴィルにとってジークは出会ったときからずっと”ただひとりの最愛”だった。
自分だけの最愛を手に入れるために、ジークを囲い、包み、何度でも繰り返し求め、乞う。
慕い続けてきたのだと、自らの執着を晒すことを厭わずに、ひたすらに愛を乞う。
自分を守るために隠し閉じ込め、剥き出しの心を愛される野生を知らずにいたジーク。辺境の地で愛され、求められて、そして…。
執着は一方通行ではない|“求め合う関係”のかたち
「執着」は奪う立場にある者の一方的な感情のように思えます。でも、その感情の正体は、奪われる者が抱いている感情なのかもしれません。
愛されたい思いを忍ばせながら、癒しを与え、満たされているのだと感じていたエザキ。
本音を隠すことが自分を、そして慈しみを与えてくれたものへの応えだと思い込もうとしていたジーク。
そんな向かうことのない感情や、欲望を閉じ込めた姿にこそ、愛おしいと感じずにはいられない清水とヴィル。
手に入れたい。
離したくない。
何度でも何度でも、伝わるまで信じるまで、壊し、奪い、繰り返す。
”あなただけがほしいのだ”と。
今回紹介した作品は、どちらも“隠されていた願い”が暴かれていく物語です。
まとめ
今回ご紹介した作品に共通しているのは「執着される理由」は受け身側にあるという点です。
満たされていると思っていながらも、なにかが足りない。
隠しているはずの”本当の気持ち”。
それらを見抜かれて、手を伸ばされて、触れられて、何度も何度も求められる。
逃れることができないほどに抱きしめられて、壊されて、やっと自分の中にあるものが”満たされる”。
「執着」は奪う側の感情のようでいて、本当は、奪われる側の中にあった願いの形なのかもしれません。
そんなふうに読むと今回の作品はまた違った甘さが感じられるのではないでしょうか。
もしも今回の作品が気になったなら、それぞれの物語を覗いてみてください。
今回紹介した2つの作品はどちらも無料で試し読みができます。
『乳牛男子の乳しぼり』
『辺境伯騎士の執着婚』
その行為はあまりにも剥き出しで強引で、愚か。そして愛おしい。それが「執着」という感情かもしれません。
ズキンと甘い高鳴りの正体は「互いに求め遭う」形、なのかもしれません。



